URAとは

研究者が研究に専念できる環境を実現し学術研究の質的強化・活性化を図ることを目的として、大学等にリサーチ・アドミニストレーターという専門人材が配置されるようになりました。リサーチ・アドミニストレーターはURAと呼ばれます。これはUniversity Research Administratorを略したものです。URAは研究推進のプロフェッショナルとして研究の幅広いプロセスに関わり、大学等の研究推進支援を担います。

東京大学におけるURAの定義

The University of Tokyo’s URA System

東京大学では、「東京大学リサーチ・アドミニストレーター制度に関する実施方針」においてURAを次のように定義しています。

本学において、URAとは、総合大学である本学の学術研究に係る諸活動を幅広く推進し、学術研究を安定的かつ継続的に進展させることを目的として、高度な専門性を持って、次の各号に定める業務を主体的に行う能力を有する者である。

  1. 本学の学術研究に関わる調査・分析並びに企画立案業務
  2. 研究資金獲得に向けた調査、企画立案、内外折衝、申請等の業務
  3. 研究資金獲得後の研究に関わる管理運営、評価、内外折衝、報告等の業務
  4. その他前各号の業務に関連する業務

東京大学のURAは、本学の学術研究に係る諸活動を幅広く推進するための「俯瞰力」、「高度な専門性」、「主体性」といった能力をバランス良く備え、状況に応じて適切に組み合わせて使うことで、研究力強化に向けた活動を推進しています。

東京大学URAに求められる能力

東京大学URAに求められる能力の図

東京大学のURA認定制度

The Univ of Tokyo’s URA Certification Process

東京大学 URA制度を紹介するパンフレット

東京大学では、優れたURAの確保・育成に向けて2016年度よりURA認定制度を実施しています。URAの定義に沿った能力・経験・経験年数を持つ学内の教職員に対して、その能力や経験等に応じた区分で総長が認定する制度です。
認定後は「東京大学URA」と称することができ、引き続き各自の所属で活動します。本部集約型ではなく部局配置型をとり、研究者により近くフレキシブルに研究推進に携わる点が東京大学の特徴です。業務の専門性や学術的専門分野など異なる強みを持ったURA群により、高度で総合力のある研究推進体制を目指しています。URA認定制度についてはパンフレットをご覧ください。

パンフレット(PDF:2.8MB)

研修・認定に関する詳細な情報はこちらから(学内限定)

URA認定制度の特性上、東京大学のURAは単一の組織に属することなく、異なる部局・多様な職位で活動しています。OJT(On-the-Job Training)が主なスキルアップの場であるとともに、URAの定義に鑑みて実務・意識の両面にアプローチする機会を設けています。

URA業務の知識を深める・幅を広げる機会
俯瞰力・主体性を考える機会
認定前
URA研修
URAワークショップ
認定後
URA連絡会議
URA勉強会
URA業務の知識を深める・幅を広げる機会
認定前
URA研修
認定後
URA連絡会議
俯瞰力・主体性を考える機会
認定前
URAワークショップ
認定後
URA勉強会

URAの成長スパイラル

URAの成長スパイラルの図
  1. URAとしての自身の基礎
  2. URAワークショップで意識付け
  3. URA研修で業務内容の知識を得る、幅を知る
  4. URA連絡会議で互いを知り、自ら業務の幅を拡大
  5. URA勉強会で自らURAを考え、意識を再定義

URAの業務内容

The Work of URAs

URAは研究の幅広いプロセスに関わり、学術研究の質的強化・活性化に貢献しています。文部科学省委託事業により作成した「URAスキル標準」では、URAの業務を3つの中核業務とそれらに関連する専門的な業務に区分しています。
次の表のように、URAの業務は(1)国の科学技術政策の調査分析や学内研究資源の把握等からなる「研究戦略推進支援業務」3項目、(2)プロジェクトの企画から設計、調整、申請までを担う「プレアワード業務」5項目、(3)プロジェクト採択後の適正な運営に関する「ポストアワード」業務5項目、そして(4)以上の3つの中核業務それぞれに関連する比較的専門性の高い「関連専門業務」9項目の全22項目にまとめられています。
近年ではIR(Institutional Research)や組織運営に関わるなど、「URAスキル標準」の区分にとどまらずURAの業務は多様化し深化しています。

URAの業務内容

出典:文部科学省「リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備」成果報告書(スキル標準の作成)

(1)研究戦略推進支援業務

①政策情報等の調査分析

政府の科学技術政策、審議会の答申・提言等や、ファンディング・エージェンシー等の事業について、その策定段階からインターネットや関係者へのヒアリング等を通じて情報を収集し、政策動向等について分析を行う。また、組織においてこの機能充実のため、施策情報等に係るデータベースの整備等、情報分析機能の強化、充実を図る。

②研究力の調査分析

研究者の研究分野、外部資金獲得状況や論文投稿状況等を把握し、マッピング等により大学・部局等の研究特性の組織的把握を行う。また、組織においてこの機能充実のため、研究者情報のデータベースの整備等、研究プロジェクトの策定基盤を強化・充実化する。

③研究戦略策定

組織の研究教育資源を有効に活用することを目指し、組織改編、研究拠点形成、研究支援体制構築に関する立案・支援、関係部局との調整等を行う。研究者相互の認識の拡大と深化、意識醸成、プレゼンス確立のため、例えば新たな課題発見のためのワークショップの開催等を行う。

(2)プレアワード業務

①研究プロジェクト企画立案支援

外部資金獲得状況等から他大学との比較、採択結果の分析等を行う。また、研究者のマッチング、研究チームの構成員候補のリストアップ等の外部資金に応募する研究プロジェクトの企画案の策定のための支援、調整等を行う。

②外部資金情報収集

国、ファンディング・エージェンシーや企業等が募集する補助金・委託事業等の国内外の外部資金及び関連情報について、その策定段階からインターネットや関係者へのヒアリング等を通じて収集、募集内容、対象や要件等を分析し、背景となる政策動向や外部資金獲得によるメリット・デメリット等を把握し、適切な研究分野・経験を持つ研究者に情報提供を行う。

③研究プロジェクト企画のための内部折衝活動

外部資金受入、研究プロジェクトに必要な研究資源の確保や協力機関との契約等締結に関する事務局との調整、学内の研究者・研究科等への研究プロジェクトへの参画交渉・調整を行う。また、申請件数が限られている大型外部資金について、学内ヒアリング等を通じて公募条件の合致の確認、申請件数の調整を行う。

④研究プロジェクト実施のための対外折衝・調整

学外の研究者・研究機関への研究プロジェクトへの参画交渉や外部資金受入、事業計画・NDA等の契約等締結に関する協力機関との調整を行う。

⑤申請資料作成支援

研究者の発想を整理し、必要なデータ等の収集、外部資金の申請書の研究計画の分筆・ドラフトや予算計画の作成を行う。また、申請書の添削・改善アドバイスや形式・内容が公募条件等に適合しているかどうかの確認を行う。申請書等を基にヒアリング審査等におけるプレゼンテーション資料等の作成や支援を行う。申請書やプレゼン資料作成指導セミナー等を開催する。

(3)ポストアワード業務

①研究プロジェクト実施のための対外折衝・調整

外部資金採択時に、ファンディング・エージェンシー等との研究計画・予算、間接経費の比率等の調整、詳細な研究・予算計画の作成を行う。

②プロジェクトの進捗管理

研究プロジェクトの運営ミーティング、研究チームミーティング等の運営、各研究チーム等を含む研究プロジェクトの進捗状況の把握・調整を行う。また、研究プロジェクトに関係する論文発表、学会発表、知的財産の取得、その他研究成果の把握・整理を行う。

③プロジェクトの予算管理

学内共同研究者、協力機関等への予算配分案の調整・作成を行うと共に、研究費の執行状況の把握及び研究計画や法令・補助条件等に適合しているかの確認を行う。また、内部監査、外部資金の額の確定検査等の検査への対応を事務と連携して行う。 研究目的・内容に必要なスペックを満たす機器等のリストアップ及び調達の際の仕様書等の作成、メーカーや経理担当者との調整を行う。

④プロジェクト評価対応関連

ファンディング・エージェンシー等による年度評価、中間評価、事後評価等に対して報告書、プレゼンテーション資料等の作成やその支援、ヒアリングへの出席等の対応を行う。また、研究プロジェクト自体で行う評価委員会の開催・運営を行う。

⑤報告書作成

各種報告書に必要な研究成果等の整理、研究者・研究チームとの執筆内容の調整・整理・取りまとめを行い、ドラフトを作成する。また、報告書の添削・改善アドバイスや報告書が研究計画等へ適合しているかどうかの確認を行う。

(4)関連専門業務

①教育プロジェクト支援

教育研究拠点形成や、連合大学院設置等、大学院教育を主とした連携支援を行う。国・大学の大学院教育方針を理解しつつ連携構想を研究面から整理すると共に、学内関係者及び外部関係機関との連絡・調整を行い、教員・事務と共同で連携に関する具体的な手順を進める。

②国際連携支援

国際的な教育研究に関するコンソーシアム形成等、海外機関との連携を進めるに当たり、海外の教育研究動向・状況を理解し、説明資料作成、連絡、調整、契約、調印式等の現地でのイベント開催等の一連の業務を、教員、事務職員と連携して行う。 また、国際共同研究支援の一環として、国外から研究者を招聘するための連絡、調整等を行う。

③産学連携支援

企業との組織的連携、産学官連携コンソーシアム、地域振興を含めた地域産業界との連携の構築支援を行う。具体的には、企業と研究者の研究プロジェクトに対する考え・要望を聞き、方向性を整理し、プロジェクトの実現に向けた交渉・仲介を行う。また、産業界と連携し公的競争的資金による複数の当事者による大型・長期のプロジェクトの推進を支援する。

④知財関連

必要に応じて学内の関連部署と連携・調整しつつ、知財の発明範囲の確定、特許明細書の検討・作成、企業と共同出願する際の調整・交渉を行う。また産学官連携コンソーシアム、特区構想等の特別な取り組みについては、事業趣旨や申請内容を踏まえ、当該事業に最適な知財の取り扱いを提案する。

⑤研究機関としての発信力強化推進

研究活動に関係する研究機関としての提言、宣言等の立案を支援する。また、学外の研究者や学外ステークホルダー等に対する研究機関としての発信力・ブランド力を強化するため、研究内容、研究環境等に関する広報活動に参画する。

⑥研究広報関連

Webサイトの掲載内容の立案、デザイン、管理や更新を行う。その他、ニュースレター、パンフレット等の海外向けも含めた広報資料の企画・作成を行う。また、プレス発表等の手配や取材の対応を行う。研究会や一般向けセミナー等におけるプレゼンテーション資料の作成や研究内容・成果の発表・報告を行うと伴に、セミナー等の成果の取りまとめ、来場者とのネットワークの形成を行う。

⑦イベント開催関連

シンポジウム等の企画・立案、プログラム策定を行い、必要な講師等の選定・招聘、関連する手続き等の事務部門・イベント会社との調整を行う。また、イベントの対象に合った適切な広報を行い、準備・開催当日の管理・運営を行う。

⑧安全管理関連

必要に応じて学内の関連部署と連携・調整しつつ、薬品等の取り扱い、遺伝子組み換え動植物、病原性微生物、放射線等の実験に関する法令等への適合性確認や定期的な運用状況の確認を行う。併せて、保管・実験等に必要な申請書類等の作成を行う。また、事故発生時の学内外の対応を行う。海外調査、フィールドワーク等における参加研究者の把握、実施計画の作成、保険加入等の管理を行う。

⑨倫理・コンプライアンス関連

必要に応じて学内の関連部署と連携・調整しつつ、利益相反や知的財産・研究成果の取り扱いに関する確認、実験等に伴い収集する個人情報の管理等を行う。また、研究者等に対する各種倫理・コンプライアンス関連の助言・情報提供を行うと共に、倫理・コンプライアンス違反があった際の学内外の対応を行う。